脳のはなし

ペットを飼うことで認知機能低下を予防

2021年に発表された「全国犬猫飼育実態調査結果」によると、新型コロナウイルス流行後にペットを飼育し始めた人への影響として、犬飼育者では「心穏やかに過ごせる日々が増えた」、猫飼育者では「毎日の生活が楽しくなった」という声が報告されています。新型コロナ流行前と比べて、「ペットと過ごす時間が増え、ペットに癒しを感じる人も増えているようです。

これまでペットとの生活にはストレスを解消する効果があることが、さまざまな研究で報告されてきました。2022年に犬や猫などのペットを5年以上飼うと、高齢者の認知機能の低下を遅らせる可能性があることが、アメリカのミシガン大学医療センターのTiffany Braley氏らの研究グループによって米神経学会年次総会で発表されました。

この研究は、研究開始時に通常の認知能力を持っていた平均年齢 65 歳の高齢者 1,369 人を対象に行われました。検診データ、認知テスト、引き算、数の数え方、単語の想起の一般的なテストの結果をもとに、対象者のそれぞれの認知機能スコアを算出し、ペットを飼っている人と飼っていない人のスコアを比較したものです。対象者のうち53%がペットを所有しており、32% が 5年以上ペットを飼っていました。

その結果、調査期間の6年間でペットの飼っている人の認知機能のスコアの低下スピードは、ペットを飼っていない人に比べ、ゆっくりと低下することがわかりました。さらに、ペットを飼っている人の認知テストのスコアは、飼っていない人と比べ、1.2ポイント高いことも明らかになりました。

研究グループによると、このような結果となったのは、ストレスが認知機能に悪影響を与える可能性があるため、ペットを飼うことで潜在的なストレス緩和の効果がある可能性があるということです。また、ペットを飼うことは身体活動を増やすことにもつながるため、認知機能を向上することにも役立つ可能性があるとも報告しています。

ただ、これらの結果からこの根底にあるメカニズムを特定するには、さらに研究を続ける必要があるということです。

参考)アメリカ神経学会(ミシガン大学医療センター)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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